境界性パーソナリティ障害(BPD)を考える

境界性パーソナリティ障害に関するインターネット上の言説を整理しています。

境界性パーソナリティ障害と対人関係上の問題

この記事は境界性パーソナリティ障害を自覚し、改善に向けて努力している方に向けた記事です。特定のどなたかを指したものでもなければ、誰かを中傷しようとして書く記事ではありません。境界性パーソナリティ障害についての正しい理解とも限りません。あくまでインターネット上の意見の一つとして読んで下さい。

今回は、境界性パーソナリティ障害と対人関係上の問題について書きます。

境界性パーソナリティ障害と「不安定な対人関係」

境界性パーソナリティ障害(BPD)の方に見られる一つの特徴は、「不安定な対人関係」という特徴でしょう。相手の気持ちに近づきすぎてしまったり、あるいは相手に攻撃をしたり、というように、うまく対人関係を作ることができません。BPDの方本人はもちろん、周囲の方もとても悩むことになります。

対人関係で苦痛を感じやすく、衝突をしたり、孤独感を感じやすいのがBPDの方の特徴とも言えます(もちろん、BPDと言うのはレッテルの一つであり、そうでないBPDの方もいらっしゃるのは十分承知の上で、それでもこうした分類は、他の病気と同じように、改善に向けては非常に有用な分類だといえるでしょう)。

実際にBPDの方が苦しんでいるのは、どのようなことなのでしょうか。BPDの方が感じる事があるのが「見捨てられることに対する不安」「拒絶される不安」である、とはよく言われるところですから、ご存じの方もいらっしゃるでしょう。例えば、コミュニケーションにおいて予想外のことを返答されたとき、あるいは自分の発言が無視されたと感じた時、など、社会における人間関係においてはありがちなことではありますが、これらの対人関係における予想外のことが、BPDの方にとっては大きな苦痛になってしまう傾向があります。

境界性パーソナリティ障害と「コミュニケーションのつまずき」

これを、「コミュニケーションのつまずき」という言葉で表現されている医師もいらっしゃいます。コミュニケーションのつまずきとは、「自分と他人の違いが明らかになった、「えっ?」という状態」を示すというのが以下の本での定義です。

治療者と家族のための 境界性パーソナリティ障害治療ガイド

治療者と家族のための 境界性パーソナリティ障害治療ガイド

 

 実際の人間関係ではコミュニケーションのつまずきが起こることはよくあることで、いわば、他人と何か有意味なコミュニケーションを行うためには、コミュニケーションのつまずきを起こしながらやりとりをしていくのが、必須ともいえます。他人とともに生きていく以上は、このつまずきに慣れて、受け入れていくほかありません。

しかし、BPDの方にとっては、このつまずきに対する耐性があまりなく、その結果、以下の両極端に走りがちです。

1.つまずきのない、なめらかなコミュニケーションのために、BPDの方が一方的に我慢をし、著しく自分に不利益なことでも受け入れてしまう。

2.しかし、そのなめらかなコミュニケーションにも限界があり、限度を超えた結果、感情が爆発し、他人とコミュニケーションすることや関係を持つこと自体を放棄し、他者を攻撃してしまう。

これらのことは、私個人的にはバランスが取られるべきなのだと思いますが、このあたりの力の調節において困難をきたしているのが、BPDの方の特徴になっています。

もう少し次回以降で、この問題について掘り下げてみます。

毎回のように申し上げていますが、自己判断で「あ、自分は境界性パーソナリティ障害なのだ」と判断しているような人を非常に多く見かけます。境界性パーソナリティ障害は、占いや性格診断のような類の軽いものではなく、医学的根拠に基づいて診断されるものです。自分の悪いところに気づいて直すのはとても立派なことではありますが、一度専門医を調べ、受診されたほうがより有益だと思います。お医者さんにかかってください。