境界性パーソナリティ障害(BPD)を考える

境界性パーソナリティ障害に関するインターネット上の言説を整理しています。

境界性パーソナリティ障害(BPD)を持つ人に「限界・境界」をどう設定し、伝えるか

今回は、境界性パーソナリティ障害(BPD)の方の周囲におられる方向けの記事です。前々回、「承認」の記事を書きました。

thinkbpd.hatenadiary.jp

今回は、この記事と同じ本からの情報になります。かなり良書なので引き続き取り上げていきます。

限界の観察

BPDの方であれ、そうでない方と接するときであれ、人間には相手の行動に対する「限界」というものが存在します。例えばあなたの相手は、お構いなしに境界線を超えてくるかもしれません。深夜に電話を掛けて叩き起こす、メールやLINEの返事を少ししなかっただけで怒り出す、などです。

こうした場合に、もしかしたらあなたは耐え続けるかもしれません。しかし、それはあまりよいやり方とはいえないでしょう。いつしか貴方の我慢は限界に達し、感情が爆発し、相手との関係が良好に保てなくなってしまうことがあります。

まずは、自分の限界がどこにあるのか?ということを、はっきりと意識する必要があります。相手が罵ってくることについてどれぐらい耐えられるのでしょうか。相手の要求にどこまで答えられるのでしょうか。

一番困るのは、自分の限界を見誤ることです。「電話に出たくないのに」出てしまうこと、「会話したくないのに」会話してしまうこと、これらで緊張し、ストレスが生じていないでしょうか。こういう状態でも、我慢強い人は「耐えてしまう」のです。しかし、この「耐える」という状態がそもそもあまりよい状況ではありません。自分が本当にしたいと思うことをしましょう。そのために、身体的な感覚、思考、行動への衝動などに注意を払う必要があります。限界は、BPDの方ではなく、むしろBPDの方の周囲におられる方が主体的に設定するものなのです。

限界の設定と伝達

自分の限界がわかって、それが超えられるようなタイミングがあれば、BPDの方に限界を設定し、伝達するチャンスかもしれません。しかし、タイミングは見極める必要があります。BPDの方が何かの理由で感情的に苦悩しているときに、あなたが限界について話すのは、あまりよいタイミングではないように思えます。屍に鞭打つとまではいいませんが、あまりポジティブな反応は期待できそうにありません。こうした場合は、「状況をただ描写する」ということが良い行動かもしれません。以下の様な例が考えられます。

例:この前の金曜日は、10時を過ぎてから4回も電話をかけてきたね。

次に、あなたの愛するBPDの方を承認し、感情的に落ち着かせつつ、状況についての気持ちを表現します。

例:「あなたと話すのは楽しいけど、金曜日の夜は違うことをして過ごしたいんだ。あなたが電話をしてきて、しかも飲み過ぎていると、本当にイライラしてしまうんだ」

そして、限界を述べます。

例:それで、金曜日の夜、バーに行った後ではもう電話をしてほしくないんだ。

最後に、相手に起こる感情の高まりを予測し、積極的に承認を行ってください。

例:金曜日の夜に、大きな古いアパートに一人で帰宅したら孤独になるのはわかるし、話をする人がいないことはとてもつらいよね。

限界設定は毅然と行うこと

このような形での限界伝達を行います。限界を伝達する場合、殆どの場合、「相手がしてきていることで、自分はしてほしくないこと」をしっかりと主張していくことになります。この時、恐れてはいけません。限界設定はあなた自身のためのものだからです。相手のためになることではない、ということは覚えておきましょう。

限界設定を設けることは当然相手にとってはつらいことです。ですから、例えば深夜には電話出来ないけど、休日の昼になら電話ができるとか、ある種の交換条件のようなものを提案できるとよいでしょう。

誰かに何かを取り下げられ、限界設定されるということがいかにつらいか、については共感できるところがあるはずです。積極的に、自分が共感できるところについて承認していきましょう。相手に伝えないと何もはじまりません。承認の方法はこちらで取り上げています。「電話したい時に誰かに電話できないと言われるのはつらいよね」と言いましょう。

限界を伝達するときには、壊れたレコードのようになる必要があります。すなわち、一言一句を何度も繰り返してください。

限界を伝達しているときに人々が感じるのは、罪悪感、恥、恐れなどです。自分自身の感情には正直になるべきです。限界を超え続けると、あなたの中での怒りやストレスはどんどん大きくなり、燃え尽きてしまうでしょう。怒りの爆発は、関係の終焉を生みます。関係を終わらせたくなければ、あらかじめの限界設定は長期的にはとても役立つ行為になると思います。このとき、相手の感情に飲み込まれないよう、自分を落ち着けながら喋るということを忘れないようにしてください。