境界性パーソナリティ障害(BPD)を考える

境界性パーソナリティ障害に関するインターネット上の言説を整理しています。

境界性パーソナリティ障害を考える上で参考になる書籍

この記事は、境界性パーソナリティ障害に「気付き」そして「治そう」としている方、及び周りの方に向けた記事です。特定の誰かに向けて書いた記事ではなく、誰かを中傷しようとする意図はありません。

今回は境界性パーソナリティ障害を理解するために役立つ書籍を紹介したいと思います。

必ず自分の頭で考えることが重要

こうした書籍を読まれるということは、少なからず境界性パーソナリティ障害についてなにかお困りの方があるのだろうと思います。その時気をつけることを先に述べておきます。

以下に挙げる書籍では、概ね3つのことが書いてあります。

  1. 境界性パーソナリティ障害の特徴
  2. 境界性パーソナリティ障害の改善
  3. 境界性パーソナリティ障害の周囲の人の接し方

こうした本を読んで感じることは以下のようなことでしょう。
「ああ、確かにこういう特徴が彼/彼女にはあるな!」→「彼/彼女は境界性パーソナリティ障害なのだ!」
境界性パーソナリティ障害は改善するのだな!」→「では自分でやってみよう!」
境界性パーソナリティ障害にはこういう風に接すればいいのか!」→「この本の通りに接してみよう!」

一つ一つコメントします。
まず、特徴だけ見て判断すること。たしかにこうした姿勢は一概に間違いとはいえませんが、境界性パーソナリティ障害について素人がたった数冊程度の本を読んで、ろくに専門教育も受けずに判断をしてしまうことは非常に危険と言わざるを得ません。境界性パーソナリティ障害の診断は専門家でも難しいといわれています。必ず専門機関で医師の診断を受けて下さい。その際には、今起こっていることを紙1枚ぐらいの分量でメモしていくと良いでしょう。その際、客観的な状況のみを書き、自分で何か判断するような記述は避けると良いかと思います。
次に、自分でやってみようとすること。これも上記と同じで、専門家の支援を得たほうが精神的にも負担が軽い場合がよくあります。
最後に、本の通りにすること。これが一番根が深い問題だと思うのですが、一口に境界性パーソナリティ障害と言っても、すべての人が程度が同じ境界性パーソナリティ障害であるということはありえません。その場合に、どのように接すれば良いのか、あるいは本人がどのように感じるのか、は個別の事情があるのです。こうした個別の事情を考慮せずに、「境界性パーソナリティ障害にはこうやって対処すれば良い」というマニュアル的なことを考えるのは、勿論役立つ面もあるのですが、いいことばかりではない、と思われます。

こうしたことをしっかりと自分の頭で考えるならば、以下の本は有用な手助けとなるでしょう。あくまで、「参考」書籍であることを常に念頭に置いて下さい。また、ご本人の改善に向かおうとする気持ち、そして実際の行動が一番大切だということを絶対に忘れないようにしてください。

境界性パーソナリティ障害 (幻冬舎新書)

境界性パーソナリティ障害 (幻冬舎新書)

 

 精神科医であり作家でもある著者自身も境界性パーソナリティ障害の方との交流経験があり、その経験も踏まえて書いた本です。境界性パーソナリティ障害の事例なども含めて、基本的なことが理解できるという評価が多いです。

 

境界性パーソナリティ障害は治せる!  正しい理解と治療法 (心のお医者さんに聞いてみよう)

境界性パーソナリティ障害は治せる! 正しい理解と治療法 (心のお医者さんに聞いてみよう)

 

 上記の書籍がやや難しいと感じる方には、絵や図表が多く、直感的に理解しやすいこちらの書籍が良い場合もあります。Amazonでは中身を少し見ることができるようですので、吟味してみると良いかもしれません。

 

愛した人がBPD(=境界性パーソナリティ障害)だった場合のアドバイス―精神的にも法的にもあなたを守るために

愛した人がBPD(=境界性パーソナリティ障害)だった場合のアドバイス―精神的にも法的にもあなたを守るために

 

特にご家族・恋人が境界性パーソナリティ障害であるという場合に特化した本です。海外の書籍の翻訳のため、いくつか(特に法的な点では)はあまり日本では役立たないと感じる面もありますが、ご家族の方の接し方、特に、いかに周囲の人が、気分を落ち着かせるかについてページ数を割いて書いてあるので、参考になるでしょう。

 

治療者と家族のための 境界性パーソナリティ障害治療ガイド

治療者と家族のための 境界性パーソナリティ障害治療ガイド

 

 境界性パーソナリティ障害について経験を積んだ精神科医による一冊です。事例についてもかなりのページ数を割いて、治療までの経過を具体的に書くという努力をしている本です。著者の境界性パーソナリティ障害の治療に対する理解は他の書籍と比べるとやや踏み込んだ印象で、社会への参加までを踏まえた改善のためのアドバイスが書かれている本です。いわゆる「家族療法」、家族が改善のために積極的に専門家のアドバイスを受け、家族自身も変わることが重要と述べており、一読の価値があるでしょう。

 

弁証法的行動療法 実践トレーニングブック‐自分の感情とよりうまくつきあってゆくために‐

弁証法的行動療法 実践トレーニングブック‐自分の感情とよりうまくつきあってゆくために‐

  • 作者: Matthew McKay,Jeffrey C.Wood,Jeffrey Brantley,遊佐安一郎,荒井まゆみ
  • 出版社/メーカー: 星和書店
  • 発売日: 2011/06/24
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
  • 購入: 1人 クリック: 1回
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毎日おこなう弁証法的行動療法自習帳

毎日おこなう弁証法的行動療法自習帳

 

  境界性パーソナリティ障害を抱えている方の中には、地方に住んでいるなどの理由で専門医の治療が定期的に受けられないというケースがあるかもしれません。境界性パーソナリティ障害の改善で重要なのは、ご本人の改善に向かおうとする努力であることは変わりありません。いわば、もう一度赤ん坊の自分を育てなおしていくような行為に近いものであるという話もよく耳にします。そうした場合には、上記の書籍2冊でトレーニングをしてみるのもよいでしょう。

以上、数冊の書籍を紹介しました。
最初に述べたことの繰り返しになりますが、必ず「自分のケースではどうなのだろう?」ということを常に疑問に思い、専門家のサポートを受けること。また、本を読んで知識を得て満足するのではなく、改善に向かおうという実際の努力をすること、を必ず忘れないようにしてください。直ぐに改善するわけではなく、数年間はかかることもありますし、一定のつらさを経験することにはなるかもしれません。しかしその後の人生はきっと実り多きものになると思います。